うつ病に運動療法が効果的かどうかは分かっていない(治療ガイドラインについて)

軽くTwitterに流したけれども、まとめてブログに書くことにした。

双極性障害とうつ病については、日本でも治療ガイドラインがある。

日本うつ病学会が、気分障害の治療ガイドライン作成委員会というページでPDFを配布しているので、必要な人は参照してみると良いと思う。疾病や医療に関する用語は注釈なく使っているので、入門書のように読むことはできないけれども、現地点で判明している治療法についてのエビデンス(確かさ)を得られる。

例えば、うつ病で困っている人で、「薬など飲まずに、運動をすれば治るだろう」などと言われたことのある人は多いのではないかと思う。世の中には運動をすることで必ず治癒できると信じている人もいるようで、実際にそういう書籍も存在する。

上記ガイドラインの、「うつ病(DSM-5) 2016 第2回改訂」から引用する。(論文名などは省略、詳しくは元のPDFを見てね。)

メタ解析においてもうつ病に運動が有効であるとする報告(略)がある。一方で、運動の効果については否定的な報告もあり(略)、比較的大規模な研究も新たに相次いで発表されており(略)、まだ確立された治療法とはいえない。運動の有効性については今後も慎重に見極めて行く必要がある。

もちろん運動することで調子が良くなる人もいると思う。試してみて良ければ、やればよいと思う。でも、現在のところ「確立された治療法とはいえない」状態なのです。効果のない人だっているだろう。

いや、確立されているとされる抗うつ薬だって、そんなに劇的に効くものでもないですしね。

なので身近な人や、もしくは主治医から「運動しろ」と言われても、やってみてもどうにもつらい人はいるでしょう。それはそんなもんなのです。医師なら「ガイドライン上、それはエビデンス的には今のところそんなに強くありません。あなたの主観ではないですか。」と言えば通じると信じる。同じノリで周囲の人が理解してくれるかどうかは、期待しにくいかもしれない。

ともかく、気分障害に限らず、脳に関する疾患はまだ分からないことだらけなので、一層の進歩を願いたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です